
横峰寺本堂
第60番・横峯寺(よこみねじ)は、西日本の最高峰石鎚山の北側中腹に位置(H745)し、山霧けむる深山の道場である。 ビジネス旅館小松の女将さん手製の遍路マップによれば、足の遅い人で往復7時間はかかるという。一昨年ご一緒した遍路友達はその前の年の台風で小松市からの遍路道が遮断され遠回りで苦労しての参詣だったと聞く。なるほどアチラコチラに修復の跡が見受けられた。女将さんのヨミ通り7時間かかって横峯寺を打ち、打ち戻る。
南光坊へ記入忘れの納経帳を電車とタクシーを乗り継ぎいただいてのトンボ帰り、宿に着いたのが9時・・・宿の女将さんも早さにビックリ。 この日は朝から小寒い、、、国道11号線を遅れ挽回もあり早足で四国中央市に向かっていると70過ぎのお婆さんが自転車で通り過ぎて停まり、かごの中をまさぐっていたが、私が近づくと「ご苦労さま、お接待です」と300円をお接待していただいた。 お礼を言って合掌すると、ニコっと笑ってやはり合掌し、走り出したがしばらくして立ち止り、私を待っていて、「美味しいみかんだからどうぞ!それに先に点滅している信号があるが、その先の信号二つ目の右斜めに遍路道があるので、そちらへお行きなさい・・・お気をつけて!」 春とは思えない冷たい突風とみぞれの降りしきる一日であったが、心のこもった接待を受け、心なしか足が軽くなった。
四国には、土地の人がお遍路さんにお茶やお菓子などを提供する「お接待」という風習がある。「巡拝者はすべて弘法大師その人である」という信仰心や、巡拝できない自分の代わりにその人を応援する「巡拝の委嘱」の現われでもあるようだ。 愛媛県も松山市を過ぎ、北条市に入ってから青年からみかんを、今治市から小松町へ入る間の一日で、コンビニで予備食として大福餅を買いに入ったら、女子店員からお茶パックの接待をうけ、途中で入った喫茶店でお客の女性から1000円を接待され、昼に入ったうどん屋の女将さんから缶コーヒーの接待を戴き、そしてビジネス旅館小松の肉の大判振る舞いの接待と驚きと感動の一日であった。
愛媛県最後の札所・三角寺(さんかくじ)へ向かう朝のことである。 この日も31キロほどの距離であるので朝食のおにぎりを用意してもらい宿を6時半に出発した。 四国中央市内の国道11号を避けマップに点線で表示された遍路道を歩いていると「お遍路さん!コーヒーを召し上がっていきませんか!」と若い優しそうな女性に笑顔で呼び止められた。画廊の様な建物の中に招き入れられると、玄関ホールには立派な応接セットが置かれており、ナント・・・美容室だった。中には、開店前の準備をしていたようで数名の若い男女の美容師たちが立ち働いていた。 煎りたての美味しいコーヒーとケーキを頂いた。マスターにお礼を言い、声をかけてくれた女性と共に若い男性美容師に写真を撮ってもらった。 後でお礼の手紙を添えて送ったところ、マスターの藤井さんが美容師組合の会合で(株)ティ・アモの代表取締役として講演をされた「一隅を照らす」という講話をメールの添付でお送りいただいた。そこには、床屋さんをしておられた父親が四国遍路を回っているお坊さんに一夜の宿を提供して以来育まれた彼のお接待の心について語られていた。従業員のみなさんに温かいお接待の心が当然の如く育まれており、店も繁盛しているようであった。
第65番札所・三角寺はひっそりと山間に建つ伊予の国愛媛、最後の札所である。 山の中腹(H500)にあり、急な石段を登ると頂上には鐘楼を兼ねる古びた山門があり、遍路は吊られている鐘楼をつき、煩悩を振り払ってから境内に入ることになる。 自然に恵まれた広大な広さを誇る境内は、緑豊かで落ち着いた雰囲気。山門を入って正面に庫裏があり、裏に本堂が控えている。 俳人の小林一茶が「これでこそ登りかいあり山桜」と賞賛した山桜が本堂の前にあった。
心温まる菩提の道場、伊予の国愛媛の遍路旅であった。 “感謝”
(奥村)
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