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ゆっくり遍路ひとり旅(4) 四国八十八ヵ寺・汗とぼやきと感動と
延べ550キロメートル程歩き続ける厳しい「修行の道場」へ

最御崎寺門前にて
 いよいよ今春は3週間の予定で昨年打ち終えた徳島県日和佐の23番札所を出発点として土佐の国・高知県の16札所を参り、菩提の道場である伊予の国・愛媛県の43番札所までの参拝を計画に組み入れての遍路行となった。
 弘法大師が「空海」と名乗るきっかけとなった地・室戸岬から最果ての地・足摺岬への土佐の道のりは美しい自然の中、遥かなる札所を目指してどこまでも、延べ550キロメートル程歩き続ける、厳しい「修行の道場」と言われるのだが・・・

 歩き遍路は、殆んど毎日精進料理しか食べていないものと思っている人が結構多いが、とんでもない話で、寺の宿坊でさえ刺身はでる。ましてや旅館や民宿では特に春先から毎日と言って良いほど刺身、鰹のたたきが食膳にならび、尚且つさざえの壷焼き、野菜の天ぷら、里芋や蕗やたけのこの煮もの、貝の吸い物など盛りだくさんで、これがまたおいしい。
 ご飯はおひつから好きなだけ食べて良いのだから、毎日30キロメートル近く歩いていなければ、只でさえ肥満な私がコロコロになってしまうのだが、3週間のお遍路で5キログラム減量出来たので、やはり食べた以上のカロリーを消費しているということであろう。

 薬王寺から室戸岬の第24番最御崎寺(ほつみさきじ)まで84キロメートル。国道55線をひたすら歩く長い道で、徳島との県境にある高知県東洋町の甲浦(かんのうら)港をすぎると、左に太平洋の海原を眺めながら海辺の道がつづく。点在する岩々を大きな濤が洗う光景こそ見事だが、突風に見舞われ菅笠の籤(ひご)が折れてしまい、やむを得ずリュックに傘を縛り付け、一日中傘ナシの歩きとなってしまったため、潮風にも影響されカナリの日焼けとなってしまい、頭皮がヒリヒリした。

 室戸岬を目指す道で二日目はお遍路先達からとても良い宿だから是非にと勧められた民宿・・・室戸市佐喜浜町尾崎の「ロッジおざき」は、思い出深い民宿となった。女将と若女将の細かなお遍路への「お接待」の気配りに心が篭っており、さすが評判の宿で満室であったが、ここでは多くの思い出に残る出会いがあった。

 川崎市の堀江さん・この人とは宿泊先が重なり、今回の遍路旅には欠かせない人となった。  刈谷市の八木さん・同じ愛知県という事で親しくさせていただき、帰省後愛知県の遍路友の会を紹介していただき、10月の例会を機に仲間に入れていただくことになった。
 北海道の高橋さん・足のマメをつぶして痛がっていたので、応急手当をしてあげたハリキリ過ぎの女性、翌日からは痛みの為歩きを中断しやむを得ず乗り物を利用、痛みが軽減してきたら改めて歩き遍路に挑戦と言っていたが、その後ナントカ結願したようで、お礼の手紙をもらった。 そして私の泊った部屋に置いてあった「おとづれ帳」には昨年焼山寺を苦労してご一緒した立向さんの手記が残されており不思議なご縁に感動を覚えた。

 佐喜浜町の宿から室戸岬の24番最御崎寺までは15キロメートル。国道55号線に出ると大型トラックがものすごい勢いで走りすぎて行く。海からの風が強いが、海側の歩道を歩く。その方が大型車の風圧で菅笠をあおられない。自動車の流れが途切れると、聞こえてくるのは風と波の音ばかり、前にも後にも、歩いている遍路の姿はない。
 室戸岬の乱礁遊歩道は淡い薄紫の浜大根の花が真っ盛りで、潮風にゆれていた。エボシ岩やビシャゴ岩など絵になる奇岩もあり、潮風に吹かれながら散策するのは心地よい。頃合の岩をみつけやっと一息つき、昼食にしようと「ロッジおざき」のおかみさんが、「お接待だから・・・」と持たせてくれたお弁当を開く。ラップに包まれたおにぎり2個と漬け物、半分に切ったバナナの弁当の上にメモがあった。 
 ―奥村様、どうかご無理をなさらないで下さい。本日は室戸岬までとの事ですが、どうぞ道中お体に気をつけてお参り下さい。この度は誠にありがとうございました。
 わたしは読んでいて熱いものがこみあげた。弁当を両手で捧げ、「ありがとうございます。いただきます」と声に出してお礼をいった。
(奥村)
海岸の濤しぶき 室戸岬にそびえる青年大師像 室戸岬の乱礁遊歩道